
丹沢農場は、雄大な丹沢山麓、神奈川県愛川町の高原の澄んだ空気の中、アニマルウェルフェア(動物福祉)の精神に則り、ストレスをかけずに健康で美味しい「丹沢高原豚」を育てています。
飼料へのこだわり

飼料には、遺伝子組み換えの混入を防ぐために分別生産流通管理を行った、トウモロコシと大豆粕を使用しています。トウモロコシはPHF(収穫後に農薬を散布していない農作物)を使用。より美味しいお肉にするために、肥育期の飼料にはトウモロコシと大豆粕の他に国産玄米、さつまいも、大麦等を使用するなどの工夫をしています。特にさつまいもの配合比率は、長年の試行錯誤の末に編み出したものです。

豚肉の味は、もちろん品種によって決まる部分もありますが、6割以上は与える飼料によって決まるとも言われているそうです。丹沢農場では長年の試行錯誤で、脂肪に旨味をもたせて豚肉の美味しさを引き出し、臭みがなく美味しい豚に育てています。肥育期の飼料には抗生物質を使用していません。
ふかふかの寝床

丹沢農場では、豚の成長にあわせて環境や飼料を変えています。体重45kgまでは健康で強い身体づくりをするために、外気の影響を受けにくいウィンドレス式の豚舎で飼育をし、その後土着微生物を活かした発酵床に移動します。
寝床には、厚さ1.2mのおがくずを敷き詰めて、微生物を繁殖させることで糞尿を分解し不快なにおいの発生を抑えています。また、丹沢農場では一般的な豚舎に比べ、広々としたスペースを確保。できるだけ自然に近い環境づくりに努め、豚が自由に動き回れるようにしています。狭いスペースで多頭を飼育する“密飼い”をしないことは、豚のストレス軽減や病気の対策だけでなく、近隣の環境への影響を最小限に抑えることにもつながっています。

アニマルウェルフェア(動物福祉)とは、いずれは奪われる命であっても、生きている間はできる限りストレスのない、その動物本来の行動ができる環境で育てるべきであるという考えに即した、畜産のあり方です。
一頭当たりおよそ1.5㎡の広々とした場所で、豚たちはのんびり昼寝をしたり、走り回ったりと自由に過ごします。剪定枝を口で噛んだり、冬は自分で穴を掘ったくぼみに入って寒さをしのいだり。夏の暑さで豚たちが弱ってしまわないように、ファンや細霧などで冷やし、快適な環境を維持するための工夫を続け、豚の習性に即した豚舎で育成、飼育しています。
飼育をする上で一番大変なこと

「一番大変なことって何ですか?」とお聞きすると、3つの答えが返ってきました。
1つめは、近年の地球温暖化や異常気象などによる、夏の暑さ。人間が夏バテしてしまうように、豚も暑さの中では食欲が減退。餌を食べ無くなれば体力が落ち、病気、そして死へとつながります。また、種付けの際の受胎率が下がるなどの影響もあります。
2つめは、飼料代の高騰。円安などの影響で飼料用の穀物やエネルギーも高騰している中、ピーク時には6割増しになったそう。2022年に配合飼料等の価格上昇が畜産経営に及ぼす影響の緩和のため、補助金交付などの制度もありましたが、その後、価格は少し落ち着いたとはいえ高止まりしています。
3つめは、病気。最も警戒しておるのは、強い伝染力と高い致死率の豚熱(CSF)。感染を防ぐため、野生のイノシシとの接点を断つだけでなく、外部からの農場への入場を禁止したり、農場内でも限られたスタッフが飼育を担当するなどしっかりと衛生管理をしています。

資源の循環
豚を肥育する際の豚舎で使っていた剪定枝は、発酵、乾燥させて堆肥へと生まれ変わります。そして、近隣の野菜生産者や有機農家さんなどに提供することで、有機資源を循環。持続可能な畜産への取り組みに取り組んでいます。

養豚から加工まで

丹沢農場では、自社農場で育てた「丹沢高原豚」と、協力農場から仕入れたこだわりの豚を、自社工場で加工。ブロック、スライス、小間切れ、ひき肉などの精肉品をはじめ、ハムやウインナー、ベーコンといった加工品まで、養豚から加工までを一貫生産しています。

製造するハムやソーセージは、豚肉本来の旨味を味わっていただけるように味付けはいたってシンプル。使用しているお塩は伊豆大島産の自然海塩“海の精”。お砂糖は鹿児島県産のサトウキビから作られる粗糖。一部の商品を除き、味付けに使われる調味料は塩、粗糖、香辛料のみで、化学調味料などは使用していません。原材料がシンプルなのは、素材となる豚肉の味や鮮度が良いからこそできることなのです。

特にウインナーに関しては、一般的に結着材が使われますが、鮮度の高い温屠体(屠畜から8時間以内)を練り上げてペースト状にしたものを加えることで、結着性を使用することなく、歯ごたえの良いウインナーが出来上がります。発色剤も使用していないので鮮やかな色はしておらず、豚肉を加熱した際の自然な色のハムやウインナー。原料そのものの美味しさを高める養豚から、豚肉本来の美味しさが感じられる加工まで、真摯に取り組んでいます。